空手は「伝統空手」「極真空手」に分かれ、これらは今も昔も変わらない。
伝統空手ルールをもって、2020年の東京オリンピックがあることにより、極真空手代表選手もオリンピックに向けて伝統空手側へのオブザーバー参加するなど、それぞれのスタンスも変化をしてきた。
ボクは伝統空手の経験から話を毎回しているので、今回も同様伝統空手主体で話をしていく。
これまで「空手道」が武道として取り組まれてきたが、オリンピックの効果もあり、大きくルールや流れが変化してきた。
この辺の流れを記載したいと思う。
これまでの空手道のありかたや、現代の空手道のあり方の比較などに役立ててほしい。
なお、こちらで書く内容は個人戦を対象にした内容となるのでご了承いただきたい。
もくじ(タップするとジャンプします)
形の採点方法やルールの変化
採点方法
これまで形競技においての大きな変化といえば、採点方法が挙げられる。
10年20年前は、形競技の採点は採点ボードを用いたものが主流で、現代の「赤」「青」の旗判定はなかったと思われる。
2019年現在ではオリンピックに向け、iPadを使用した採点方法にシフトされている。
詳細を知りたい方は以下の内容をチェック!
【空手】分かりやすく!形の採点方式の変更についての概要・解説道着の音を鳴らしてはいけない
道着はスレれば勿論スレた音が鳴る。(ナイロンの衣服を想像しよう)
昔はこの道着の音の鳴らし方でインパクトをつける選手も多かった。
現代でもそのような選手はいるが、昔と違いそれは「技の本質」からして見ると違い、減点の対象にもなっている。
技を繰り出す際は、自分自身のそのままの力を見せなければならない。
息吹をたててはいけない
息吹とは強い呼吸とのことで、技を出す瞬間に息を「フッ」と吹き出すことで技が強く見え、これにより技が決まっているように見えるもの。
上記の道着の音を鳴らしてはいけないと同じように、本来見せるべき技の本質とは違うため、現代ではこの行為も減点の対象になっている。
形がそれほど得意な選手でなくても、これらを駆使することで素人目にはとても上手そうに見えてしまうのである。
組手の採点方法やルールの変化
採点方法
昔の組手においての採点方法については、現代にある【一本(3P)・技あり(2P)・有効(1P)】ではなく【一本(2P)・技あり(1P)】のみであった。
また、「勝負三本始め!」という発声を審判が行い試合が開始されるが、この三本とは一本(2ポイント)が三つ・・・すなわち6ポイント先取が勝利というルールだった。(時間制限もあり)
そのため、現代にあるような12-10というように、ポイントを取り合うというようなスコアは存在しなかった。
当てると反則
昔はポイントを取る際にはガッツリ当てていたが、現代では反則行為。
可能なのは軽いスキンタッチのみだ。
頭が動く程の突き&蹴りなら反則だ。
勿論当てなくてポイントは取れるが、昔以上に技を出す際のコントロールが必要になっている。
投げ技・つかみ技
ポイントを取るために、昔は投げ技・つかみ技も充実していた。
理由は道着を両手で掴むことが可能だったからだ。(流れの中であれば)
現代では両手で道着を掴む行為は反則行為となり、結構シビアに判定される。
また、つかみ技等する際の細かなルールも追加されている。(詳細は割愛)
反則カテゴリーの増加
昔も今も反則負けがあるが、昔と大きく違い現代では反則がカテゴリー化された。
カテゴリー1:一般的に負傷につながる行為
カテゴリー2:場外や逃避など負傷とは違う類の反則
両カテゴリーの反則を一度に出されることはないが、それぞれのカテゴリーで忠告、警告、反則注意、反則となり4回の忠告が与えられたら反則負けとなる。(一気に反則注意となったりする例外もあり)
形の環境の変化
道着の規定
形における環境の大きな変化は道着の規定が挙げられる。
昔は形競技も組手競技も1枚の道着で、オールインワン的な役割を果たしていたが、現代は形・組手それぞれに適した道着が開発されたことで自分の競技に適した道着を選手は選ぶようになってきた。
形競技は袖・裾ともに短く「手」「足」が隠れることなくしっかり見えなければならない。(具体的な規定は割愛)
対して昔は現代ほどの厳格なルールはなかった。もちろん道着の着こなしには現代同様かなりの配慮をしていた印象。
安全マット導入
これは形も組手も当てはまる。
床面に安全マットを導入したことは大きな変化だろう。
トータルで100万円相当する設備なので、道場運営する方や、学校関係者など金銭的な問題で悲鳴をあげる人も少なくない。
これにより転倒した際の負傷度合いの軽減、選手の足への負担軽減などが実現した。
組手の環境の変化
道着の規定
組手も形と同様、道着の規定が変化してきた。
試合前の道着の計測で、規定外の道着を着ていた場合は失格になることがある。(詳しくは割愛)
防具の変化
防具の規定の変化も挙げられる。
昔は現代と比較すると、かなり安全性能に劣った防具を着用して試合をしていた。
顔面を守るメンホーは外れることもあったり、拳と相手を守る拳サポーターも現代では考えられないほど簡素な作りだったし、プロテクトの度合いが強すぎて、逆に相手に当たった際のダメージが強すぎる頑丈な仕様の時期もあった。
また、すねを守るシンガード、足の甲を守るインステップガードはなかった。
その上、ポイントを取るには相手のアゴもとにしっかり当てなければポイントが取れなかったため、怪我人も多かった。
防具をしてても鼻骨骨折した人も見てきた。
現代と性能的に大きく変わらないのは腹部を守るボディプロテクターくらいか・・・
また、昔は全日本選手権などの大きな大会でも顔面を守るメンホーが使われてきたが、現代での大きな試合では基本的にメンホーは使用しない。
これは大学生以上を対象とした試合から適応されているが、この部分では昔の方が安全確保されていたのではないかと思われる。
安全マット導入
形と同様の理由なので理由は割愛する。
形の技術の変化
形競技の技術や考え方の変化についても20年もの歳月が流れればもちろんある。
まぁ形の構成については、それぞれの動きに理由がありその考え方は昔から変わることがないため、形の中身は変わることはない。
ただし、技の見せ方は変化している。
また、現代の形ではトップ選手が昔はほぼ演武することのなかった形を演武するケースも増えてきた。
八歩連(パープーレン)
知花公相君(チバナクーシャンク)
などという形は近年話題に上がる形となり、トップ選手も演武している。
組手の技術の変化
フットワーク
組手においてはこの20年で形競技以上に劇的に変化してきた。
まずはフットワークから。
現代の主流の構えは【半身・フットワーク】から攻撃を仕掛けるケースがほとんど。
昔の主流の構えは【体(へそ)は正面・どっしり構えてフットワークしない】ケースが多かった。
昔の空手は無駄な動きをせずに、相手を仕留める極真空手のようなエッセンスも含まれていたが、現代はいかに効率よくポイントを上げるかという問いに答えるような戦い方となっている。
技の初速・スピード
技の初速やスピードの変化は際立った違いと考える。
現代では、最高のスピードをものにしてポイントを取ろうとする選手も多い。
フットワークや足の運び方、筋肉の使い方など様々な方法論が解明され、よりスピーディーな試合展開を可能としている。
技の種類やバリエーション
組手の技については、フットワークを積極的にしていることにより入り方のバリエーションが増えた。
昔は足技の裏回し蹴り・サソリ蹴りなどの技はなく、基本的な回し蹴りを多用していた。
また、現代では反則行為となる両手で相手道着を掴んで倒す行為も、流れの中ならば使えたため豪快な技で勝負を決める選手も多かった印象。
相手に攻撃を当てなければポイントにならない理由から、相手懐に深く入れる選手が多かった印象にもある。
相手の中に何度も深く入る行為は結構な恐れもあるだろう。
そういう意味では、おそらく現代と比較して昔の選手は、メンタルや忍耐力・根性と言われるものが強かったのかなと考える。
体型
もちろん全ての選手に当てはまるわけでもないが、現代は昔と比較して栄養学としての考え方が普及し、より正しい方法でカラダを作り上げる選手が増えてきている。
現代は細マッチョと言われるような、しなやかな筋肉を纏う選手が多い印象にある。
昔の組手選手はもっと屈強な印象で、体が大きい選手が多い印象。
より効率よくポイントを取るためのカラダ作りになっているのではないかと考える。
現代空手と昔の空手を見比べよう!
つらつらと言葉では語ってみたものの、実際にその違いを目で見た方が説得力が上がるだろう!
是非ネットで上がっている動画の中で見てもらおう。
形競技の動画
まずは形競技。
上は1998年の映像で若干画質が悪いが、日本を代表した選手であり、現在は指導者としても絶大な支持のある「阿部 良樹選手」のスーパーリンペイ。
下の動画が、2018年の全日本選手権の映像で不動の日本のエース「喜友名」選手のアーナン。
流派の違いがあるが、20年の歳月の違いがわかるかもしれません。
組手競技の動画
続いて組手競技。
上は1997年の全日本選手権決勝「国分 利人選手」VS「藤井 英治選手」。
下の動画は2017年の全日本選手権のポイント集です。
これが20年の歳月です。
きっと形競技以上に大きな違いに気づくことでしょう。
まとめ
このように20年の歴史を映像にすると、どんなスポーツでもその違いに気づくことでしょう。
2020東京オリンピックの影響もあり、空手道は武道からスポーツへと変化してきた。
これは空手界のとって、武道にとっていいものかは今はわからない。
その中で現代の選手は先人の教えがあり、今を生きている。
そして現代の選手は、古きを守り未来や可能性を切り開いていく必要がある。
過去の選手と現代の選手に敬意を示し、まとめとさせて頂く。